国語の授業がうまくいかない──そう感じたことはありませんか。
意見は出るのに深まらない。盛り上がるのに、終わったあと「で、今日何を学んだんだっけ?」と自分でもモヤモヤする。私自身、若手の頃はずっと同じ壁にぶつかっていました。
でも、あるとき気づいたのです。国語は「推測の教科」ではなく、「言葉を根拠に考える教科」なのだということに。子どもの発言そのものよりも大事なのは、「本文のどこを根拠にそう考えたのか」。ここが変わると、教室は驚くほど静かに、そして深く動き出します。
この記事では、国語の授業を「気持ち当てゲーム」から解放し、子どもの学びを一段深くするための3つの極意と、明日から試せる具体的なステップをお伝えします。
▼ 本記事のベースになっている一冊
国語授業の「根拠にもとづく読み」や「一本の太い問い」という考え方は、下の本から大きな影響を受けています。
「国語の授業を根本から見直したい」という先生には、この記事とセットで読むのがおすすめです。
導入|国語の授業は「気持ち当てゲーム」じゃない
「登場人物の気持ちを考えましょう」──国語の授業で、よく聞くフレーズです。もちろん、人物の気持ちを考えること自体は大切です。しかし、授業がいつのまにか 「作者はきっと〇〇だと思って書いた」「Aさんはこう感じたに違いない」 といった“当てもの大会”になってしまうと、子どもたちは次第にこう感じ始めます。
「どれが正解かわからない」
「先生の答え当てゲームみたい」
「なんとなく多数派っぽい方を言っておこう」
これでは、言葉と向き合うはずの国語の時間が、「雰囲気の読み合いの時間」になってしまいます。
国語の授業の本質は、「気持ちを当てること」ではありません。本文の言葉を手がかりに、自分の考えを組み立てていくことです。
筆者の背景|“気持ち当て授業”に悩んでいたころの話
私自身、若手のころは「たくさん意見が出る授業=良い国語の授業」だと思っていました。
とにかく発問を増やし、「どう思う?」「他には?」「そう思う人?」とテンポよく問いかけていく。黒板には子どもの意見がずらりと並び、なんとなく“活発な授業”をしているような気になっていました。
しかし、授業後にノートを開いてみると、 「楽しかった」「いろんな意見が出た」「またこの話をしたい」 といった振り返りばかりで、「何を学んだのか」が自分でも説明しづらいのです。
そんなときに出会ったのが、「本文の構造」と「言葉の働き」から授業を組み立てる視点でした。
登場人物の気持ちよりも先に、「どこが変化しているのか」「どこにズレや対比があるのか」に注目して教材を読む。そうして見えてきた「読みの芯」に合わせて、発問をシンプルにしていく。
この読み方に出会ってから、教室で起きることが変わりました。
・発言の数よりも「根拠の質」が上がる
・子ども同士の意見のぶつかり合いが、感情論ではなく「言葉の根拠」をもとに起こる
・「今日の学び」を自分の言葉でまとめられる子が増える
国語の授業が、にぎやかな“おしゃべりの時間”から、静かに熱い「言葉の探究時間」に変わっていきました。
本題|国語授業の極意は“たった3つ”
ここからは、国語の授業づくりで私が大切にしている3つの極意を紹介します。どれも特別なテクニックではなく、授業の「見方」を変えるための視点です。
① 子どもの「意見」ではなく「根拠」に光を当てる
国語の授業でまず大事にしたいのは、意見そのものよりも「どこを根拠にそう考えたのか」を問うことです。
例えば、子どもがこう言ったとします。
「主人公は、本当はさびしかったんだと思います。」
このときに、「そうだね、さびしいよね」で終わらせてしまうと、授業は“気持ち当てゲーム”に戻ってしまいます。
ここで一歩踏み込んで、こう返してみます。
「そう考えた“もと”になった言葉は、本文のどこにある?」
「どの文が一番そう感じさせる?」
このやりとりをくり返すことで、子どもたちは次第に 「なんとなくそう思う」から「この言葉があるから、こう思う」 へと読みを深めていきます。
教師側も、発問を考えるときに 「どんな意見を引き出そうか」ではなく、
「どの部分を根拠として押さえたいか」から逆算して授業をデザインすると、板書も発問もスッキリしていきます。
② 文章の“ズレ・変化・対比”を読む
二つ目の極意は、「変化・ズレ・対比」に着目して教材文を読むことです。
物語文でも説明文でも、「読みどころ」は必ずどこかにあります。その多くは、
- 主人公の心情の変化
- 同じ人物の言動の変化
- 以前との対比(昔と今、前半と後半)
- 常識とのズレ、読み手の予想とのズレ
といった形で現れます。
授業づくりの段階で、まず教師自身が 「この教材のいちばん大きな“変化”はどこか」
「どんな“ズレ”に気づいてほしいのか」 を、はっきり言葉にしておくことが大切です。
そのうえで、子どもたちにはこう問いかけていきます。
「さっきまでの主人公と、ここの主人公は何が違う?」
「この場面と最初の場面をくらべると、どんなところが変わっている?」
「作者は、わざわざこの言葉を繰り返しているけど、なぜだろう?」
こうした問いは、すべて“変化・対比・ズレ”に気づかせるためのものです。
すると、単発の感想ではなく、“物語の流れ全体”をつかんだ読みへと自然にシフトしていきます。
③ 授業はたくさんの問いではなく「一本の太い問い」で動かす
三つ目の極意は、「たくさんの問いよりも、一本の太い問いを決める」ことです。
授業を盛り上げようとすると、つい発問が増えてしまいがちです。
- このとき主人公はどう思った?
- なぜそう思ったんだろう?
- 自分だったらどうする?
- 同じ経験をしたことある?
これらは一つひとつは悪くありませんが、数が多いほど子どもの思考は散らばってしまいます。
そこで、授業前に「この時間で一番考えたい、一本の太い問い」を決めておきます。
例えば、
「主人公は、なぜ最後にその選択をしたのか?」
「題名『〇〇』には、どんな意味がこめられているのか?」
「この物語は、私たちに何を問いかけているのか?」
といった問いです。
授業中に出てくる発問や子どもの発言は、すべてこの太い問いに結びつけていきます。
最後のまとめでは、ノートや板書を見返しながら、 「今日の太い問い『〜〜〜』について、自分の今の答えを書いてみよう」 と振り返ることで、学びの筋道が1本の線として子どもの中に残るようになります。
実践編|明日の国語の授業が少し変わる4ステップ
ここからは、上で紹介した3つの極意を、明日の授業から実際に試してみるための4ステップとして整理します。
STEP1:教材文を「変化・ズレ」で読み直す
授業の前に、まずは教師自身が教材を読み直します。
そのとき、
- 一番大きな「変化」はどこか
- 読み手の予想とズレるところはどこか
- 強く対比されている言葉・場面はどこか
にマーカーを引いていきます。
これが、授業の中で子どもたちと一緒に迫っていきたい「読みどころ」になります。
STEP2:一本の“太い問い”を決める
次に、今日の授業の「太い問い」を1つだけ決めます。
ポイントは、
- 変化やズレの理由を考えさせる問いにする
- 子どもが自分の経験を重ねたくなるような問いにする
- 授業の終わりにもう一度立ち返れる問いにする
ことです。
この一本の問いが決まると、導入の問いかけも、板書の構成も、振り返りの書かせ方も、すべてがシンプルになります。
STEP3:子どもの意見に「どこが根拠?」と問い返す
いざ授業が始まったら、子どもの発言に対して意識的に 「どこを根拠にそう考えたの?」 と問い返していきます。
最初は子どもたちも戸惑うかもしれません。
しかし、繰り返していくうちに、
- 本文に目を落とす習慣
- 自分の考えを、言葉で説明しようとする姿勢
- 友だちの意見を「根拠」から聞こうとする視点
が育っていきます。
教師は、「いいね、じゃあその文に線を引いてみよう」「同じところを根拠にした人はいる?」と、
子どもの視線を本文に戻し続けるガイド役に徹します。
STEP4:板書と振り返りで「読みの道筋」を見える化する
最後に大事になるのが、板書と振り返りです。
板書は、子どもの意見をただ並べるのではなく、
- 太い問い
- 変化・ズレの場面
- それぞれの場面での子どもの考えと根拠
を「つながり」として見えるように意識します。
授業の終わりには、ノートで短い振り返りを書かせます。
- 今日の太い問い「〜〜〜」に対する自分の答え
- その答えの根拠になった、本文中の言葉
- 友だちの意見を聞いて変わったこと・気づいたこと
といった観点を示しておくと、
国語の時間が「なんとなく雰囲気のよい時間」から、 自分の考えを言葉で組み立てていく時間へと変わっていきます。
振り返りの書き方については、別記事
「振り返りジャーナルの書き方と活用法」 でも詳しく紹介していますので、あわせてご覧ください。
まとめ|国語は“子どもの世界の見え方”を育てる教科
国語の授業は、知識を教え込む時間でも、正解を当てさせる時間でもありません。
言葉を通して世界の見え方を広げていく時間です。
そのために、私たち教師ができることは、たくさんの魔法のようなテクニックを覚えることではなく、
- 子どもの意見よりも「根拠」に光を当てる
- 文章の「変化・ズレ・対比」を一緒に読み解く
- 一本の太い問いで授業を貫く
といったシンプルな原則をぶらさずに持ち続けることではないでしょうか。
「国語の授業、なんだかモヤモヤするな…」と感じたときには、ぜひ今日紹介した3つの極意を思い出してみてください。
教室の空気が、少しずつ、でも確かに変わっていくはずです。
もし、この記事を読んで感じたことや、ご自身の実践の工夫があれば、ぜひコメントで教えてください。
また、 「子ども主体の話し合い活動を育てる3つのステップ」 の記事も、あわせて読んでいただくと、国語授業のデザインがより立体的になると思います。
引用紹介・参考文献
引用紹介:国語授業の本質を考える動画
本記事の考え方の一部は、以下の動画内容に刺激を受けています(内容は著作権に配慮した要約です)。
- 国語科授業の本質(YouTube)
https://www.youtube.com/watch?v=h0EXFp9G1NI&sttick=0
この動画では、国語の授業を 「気持ちを当てる授業」から「言葉を根拠に考える授業」へとシフトする視点が語られています。
特に、
- 国語は「推測」ではなく「根拠にもとづく読み」の教科であること
- 読みの中心には「変化・対比・ズレ」があること
- 授業は多数の問いではなく「一本の太い問い」で設計すること
参考文献・書籍リンク
国語授業の考え方をより深く学ぶうえで、次の一冊も大いに参考になります。
三訂版 国語力をつける物語・小説の「読み」の授業 ―「言葉による見方・考え方」を鍛えるあたらしい授業の提案―
この書籍は、本記事で紹介した「根拠にもとづく読み」「一つの太い問い」という授業観を、より体系的に学ぶことができます。
国語授業をレベルアップしたい全ての先生におすすめです。
