【導入】厳しさと優しさのはざまで

学級経営で一番悩ましいのは、厳しさと優しさのバランスです。
私自身も、厳しすぎて子どもが萎縮した年もあれば、優しすぎてクラスが乱れた年もありました。

どっちに寄っても失敗する…。ちょうどいいバランスって何?
実は1500年前の聖ベネディクトゥスも同じ壁にぶつかっていました。
若い頃の彼は過酷な戒律を仲間に押し付け、反発を買い、何度も命を狙われるほどでした。
そこから学んだのは、厳しさだけでも、優しさだけでも共同体は成り立たないということ。
その経験を土台に生まれたのが「ベネディクトゥスの会則」です。
【筆者の背景】私の失敗とベネディクトゥスの失敗


小学校教員として十数年、私は毎年クラス経営の軸を探してきました。
「きまり重視」でがんじがらめにした結果、子どもの表情が消えた年
「子ども主体」を意識しすぎて、収拾がつかなくなった年
失敗の数だけ学びがありました。



先生でもそんな失敗があるんですね…。なんだか安心しました。
ベネディクトゥスも同じ。
若き日は厳格さが災いして孤立しましたが、失敗から学び、やがて共同体を生かす柔軟な戒律をつくり上げました。教師もまた失敗を重ねながら学び続ける存在。そこに大きな共感を覚えます。
【歴史の知恵】ベネディクトゥスの会則とは?


聖ベネディクトゥス(480〜547年頃)は、修道士たちが共同生活をするための規範をまとめました。
それがベネディクトゥスの会則です。
会則の特徴は次の通りです。
【秩序】:一日のリズムを守る
【服従=傾聴】:互いの声に耳を傾ける
【謙虚】:失敗や弱さを受け入れる
【安定】:同じ共同体にとどまり根を張る
【共同体】:祈りと労働を分かち合う
この5つの柱は、クラス経営にもそのまま応用できるのです。
【本題】聖ベネディクトゥスの5つの智慧と学級ルールづくり


1.【秩序】=時間のリズムを守る
修道士たちは祈りと労働のリズムを徹底しました。
学級でも「朝の会→授業→帰りの会」という流れを守ることで、安心感が生まれます。



チャイムのあとすぐ始めると、落ち着いて勉強できるよね。
2.【傾聴】=人の話をよく聞く
「服従」とは単に命令に従うことではなく、相手の声を聴く姿勢です。
学級ルールを子どもと一緒に考えると、ルールは押し付けられるもの → 自分たちでつくったものに変わります。



話を最後まで聞いてもらえると、うれしい!



なるほど、だから“聞く姿勢名人”みたいな仕組みが効果的なんですね。
3.【謙虚】=失敗から学ぶ姿勢
ベネディクトゥスは謙虚さを12段階に整理しました。
学級でも「できなかったことを振り返る」「友達の意見を受け入れる」を習慣化すると、子どもは失敗を前向きにとらえられるようになります。



失敗はチャレンジした証なんです。
4.【安定】=安心できる居場所をつくる
修道士は「同じ修道院にとどまる」ことを誓いました。
学級では、子どもが“ここにいていい”と思える居場所を保障することが大切です。



自分の係があると、クラスの一員って感じがする!
5.【共同体】=みんなで支え合う
修道士は祈りも労働も学びも分かち合いました。
学級でも「困ったときはお互いさま」という文化を広げたいですね。



○○さんがプリントを配るの手伝ってくれたよ!
【実践編】明日からできるシンプルな学級ルール運用法


ここでは、5つのルールを子どもにどう伝え、どう日常化するかをまとめます。
ルール別の実践方法(表形式)
ルール別の実践方法(表形式)
【秩序】【傾聴】【謙虚】【安定】【共同体】の5本柱を、子どもへの伝え方/実践例/ふり返りまで具体化。
ルール | 子どもへの伝え方 | 実践例 | ふり返りの問い |
---|---|---|---|
【秩序】時間を大切に | 「時間を守ると安心して始められる」 | 朝の会を全員で声かけ開始 | 「今日、時間を意識できた場面は?」 |
【傾聴】人の話を聞く | 「相手の方を見ることが大切」 | 聞く姿勢名人を紹介 | 「友達の意見を最後まで聞けた?」 |
【謙虚】失敗から学ぶ | 「失敗はチャレンジの証」 | 今日の失敗発表会 | 「今日、失敗から学んだことは?」 |
【安定】居場所をつくる | 「優しさが安心をつくる」 | 係や当番を全員に配置 | 「今日はクラスの安心に何をした?」 |
【共同体】助け合う | 「助けてもらったら次は自分が助ける」 | 今日のありがとう発表 | 「今日は誰にありがとうを伝えたい?」 |
活用の工夫
【掲示物】:教室に掲げ、子ども自身の言葉で加筆していく
【帰りの会】:「今日はどのルールを意識できた?」と全員で振り返る
【学期末】:「5つのルールの中で一番できたことは?」を共有し合う
こうした仕組みを取り入れると、ルールは守らされるものからみんなで育てるものに変わっていきます。



読者の声
「これなら無理なく日常に組み込めそうです!」
【まとめ】教師もまた共同体の一員


聖ベネディクトゥスの会則は、1500年前に生まれながら今も光を放ち続けています。
学級経営に置き換えるなら、ルールは子どもの居場所を守るためのものです。



教師もまた共同体の一員として、厳しさと優しさの間で揺れながら
子どもたちと共にルールを育てていく。
そこにこそ、クラスの成長と安定があるのではないでしょうか。
👉 次回は「謙虚の12段階を学級づくりにどう応用できるか」を掘り下げます。
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