「振り返りをしましょう」と言うと、子どもたちは何を書くでしょうか。「〇〇ができませんでした。次はがんばります」。——これ、実は「振り返り」ではなく「反省」です。
この二つは、似ているようで、まったく違うものです。そして、この違いを教師が理解しているかどうかで、振り返りジャーナルの質は大きく変わります。今回は、あえてハウツーではなく、ジャーナルの土台にある「考え方」の話をしたいと思います。
「反省」は、ダメだった自分を探す
反省とは、基本的に「できなかったこと・ダメだったこと」に目を向ける行為です。「忘れ物をしてしまった」「発表できなかった」「けんかしてしまった」。そして、「次はしません」「がんばります」と誓って終わる。
反省が悪いわけではありません。過ちを認めることは大切です。けれど、反省ばかりを繰り返すと、子どもの中に残るのは「自分はダメだ」という感覚です。書けば書くほど、自己評価が下がっていく。「振り返り=自分のダメ探し」になってしまったら、それは自分を見つめる習慣ではなく、自分を責める習慣です。
「振り返り」は、事実と向き合い、次を考える
一方、振り返りとは、良し悪しの前に、まず「何があったか」「自分はどう感じたか」という事実に向き合う行為です。
「今日、発表で緊張して声が小さくなった。悔しかった。でも、最後まで言えた」。ここには、ダメ探しも、無理な決意表明もありません。あるのは、出来事と感情の観察です。そして観察ができて初めて、「じゃあ次はどうしようか」という前向きな問いが、自然に生まれてきます。
つまり、こういうことです。反省は「ダメだった自分」から始まり、振り返りは「あった事実」から始まる。反省は過去に向かって謝り、振り返りは未来に向かって考える。この出発点の違いが、書く子どもの心に、まったく違う影響を与えるのです。
できたことも、振り返りの対象になる
もう一つ、大きな違いがあります。反省は失敗にしか向かいませんが、振り返りは成功にも向かうということです。
「今日、うまくいったのはなぜだろう?」。この問いは、反省の枠組みからは出てきません。でも、学びとしては極めて重要です。うまくいった理由を自分の言葉で説明できた子は、その成功を再現できるようになります。
できなかったことだけでなく、できたことも、感じたことも、疑問も、全部が振り返りの材料になる。だからジャーナルには、「よかったこと」「気づいたこと」「不思議に思ったこと」が並んでいていいのです。むしろ、それこそが健全な振り返りの姿です。
教師の問いかけが、どちらに向かうかを決める
子どもの書くものが「反省」になるか「振り返り」になるかは、実は教師の問いかけ次第です。
「今日できなかったことは?」と問えば、反省が返ってきます。「今日、心が動いたのはどんなとき?」「うまくいったこと、いかなかったこと、どちらでもいいから教えて」と問えば、振り返りが返ってきます。
そして、コメントの返し方も同じです。失敗の記述に「次は気をつけようね」と返せば反省を強化し、「そうか、悔しかったんだね。どうしてそうなったんだと思う?」と返せば、振り返りを深めます。教師のまなざしが、子どもの自己との向き合い方を形づくっていくのです。
おわりに
「振り返り」と「反省」の違い。それは、自分のダメを探すのか、自分の事実と向き合うのか、という違いです。そして、過去に謝るのか、未来を考えるのか、という違いです。
振り返りジャーナルが育てたいのは、自分を責める力ではなく、自分を見つめ、次の一歩を自分で考える力です。この土台の考え方さえぶれなければ、ジャーナルはきっと、子どもが自分を好きになっていくための時間になります。ハウツーの前に、この違いを、心に留めておいていただけたらうれしいです。
