「思っていることを、口では言えない」
中学生、とくに思春期まっただ中の生徒たちと接していると、そんな場面によく出会います。心の中ではたくさん考えているのに、それを言葉にして人に伝えるのは苦手。照れもあるし、反発もある。授業中に手を挙げて発言することすら、ハードルが高い年頃です。
以前、振り返りジャーナルについて書いた記事では、小学校での実践を中心に紹介しました。でも実は、振り返りジャーナルは中学生にこそ効くのではないか——最近、そう強く感じています。今回はその理由を、3つの視点から書いてみたいと思います。
理由1:口で言えないことを、紙になら書ける
思春期の生徒にとって、「みんなの前で話す」ことは大きなプレッシャーです。本当はクラスのことを考えていても、友達の目が気になって発言できない。先生に相談したいことがあっても、面と向かっては言い出せない。
でも、ジャーナルという「1対1の、誰にも見られない場所」でなら、するすると本音が出てくることがあります。教室では一言も話さない生徒が、ノートには驚くほど深いことを書いてくる。「実は最近、友達関係でしんどい」「将来が不安で眠れない」。声にならなかった言葉が、文字になって立ち上がってくるのです。
振り返りジャーナルは、話すのが苦手な思春期の生徒にとって、自分の内側とつながるための数少ない通路になり得ます。
理由2:感情の嵐を、客観視する練習になる
思春期は、感情が激しく揺れる時期です。ささいなことでイライラしたり、理由もなく落ち込んだり。その感情の波に、生徒自身が振り回されてしまうことも少なくありません。
振り返りジャーナルを書くという行為は、自分の感情を一度「外」に出して、紙の上で眺める作業です。「今日、なぜあんなに腹が立ったんだろう」と書いているうちに、「ああ、本当は悲しかったのかもしれない」と気づくことがあります。
感情をそのまま爆発させるのではなく、いったん言葉にして客観視する。この習慣は、思春期の生徒が自分の心と上手につき合っていくための、大切な力になるのではないでしょうか。書くことは、暴れる感情に名前をつけ、手なずけていく練習でもあるのです。
理由3:反抗の奥にある「本当の気持ち」が見える
反抗期の生徒は、教師に対して反発的な態度をとることがあります。けれど、その態度の奥には、たいてい別の感情が隠れています。本当は認めてほしい、本当は不安、本当は助けてほしい。反抗は、その裏返しであることが多いのです。
面と向かったやりとりでは、生徒も教師も、つい表面的な感情の応酬になってしまいます。でもジャーナルのやりとりでは、生徒は少し冷静になって、本当の気持ちを書いてくることがあります。教室で反抗的だった生徒が、ノートには「先生、この前は言い過ぎました」と書いてくる。そんなことが、本当に起こります。
振り返りジャーナルは、反抗という「鎧」の下にある、生徒の素顔と出会わせてくれます。そしてその素顔を知ることが、信頼関係を結び直すきっかけになっていくのです。
中学校で続けるための工夫
とはいえ、思春期の生徒に毎日きっちり書かせようとすると、かえって反発を招きます。いくつか工夫を挙げておきます。
まず、量を求めないこと。一行でもいい、単語だけでもいい。「書かなきゃ」という負担になった瞬間、ジャーナルは死んでしまいます。
次に、評価しないこと。内容に点数をつけたり、字の丁寧さを指摘したりしないこと。ここは安心して本音を出せる場所だ、と生徒が感じられることが何より大切です。
そして、教師のコメントは短くていい。長い説教を書き込むのではなく、「読んだよ」「そう感じたんだね」という一言で十分。受け止めてもらえた、という感覚が、次の一行を引き出します。
おわりに
振り返りジャーナルは、小学生のためだけのものではありません。むしろ、言葉にできない思いを抱え、感情の波にもまれ、反抗という形でしか自分を表現できない——そんな思春期の生徒にこそ、静かに効いていく実践だと感じています。
口を閉ざした中学生の、その内側で何が起きているのか。それを知る窓を、一冊のノートが開いてくれるかもしれません。よければ、中学校の教室でも試してみてください。
📚 関連記事
中学生の振り返りジャーナル お題20選──思春期の生徒が書きやすい質問例
この記事で紹介した振り返りジャーナルを、実際にどんなお題で始めればいいか。思春期の生徒が書きやすい質問例を、20個カテゴリー別にまとめています。
