「辞めたい」と口に出した瞬間、話が二択になります。辞めるのか、続けるのか。
でも、この二択はたいてい早すぎます。何に困っているのかが整理されていないのに、答えだけ先に求められる状態です。
この記事では、辞める前に分けて考えたいことを書きます。結論は出しません。決めるのは先生自身だからです。
先に、ひとつだけお願いがあります。眠れない日が続いている、朝に体が動かない、食欲が落ちた。そういう状態のときは、この記事を読むより先に動いてください。医療機関を受診するか、職場の産業医や自治体の相談窓口に連絡してください。
休職や業務の軽減が要る場合もあります。早めに動くことと、重い判断を急がないことは両立します。
「辞めたい」は、ひとつのことを指していない
「辞めたい」という言葉は、別々の問題が束になったものです。束のまま扱うと、どこから手をつけるかが決まりません。
私はこのブログで、学校のしんどさについていくつか書いてきました。位置づけのはっきりしない全員一律の研修のこと。夏休みの朝の30分が誰の仕事なのかということ。部活動の「廃止」で何が切り捨てられたかということ。
書きながら気づいたことがあります。これらは全部、ちがう種類の問題でした。制度の仕組みから来るもの。職場の慣習でそうなっているもの。自分が大切にしたいことと、環境が合っていないもの。
それが混ざったまま、ひとつの「辞めたい」になります。ほどいておくと、続ける場合も辞める場合も、次に何を見ればいいかの手がかりになります。
「自分で決められる」「相談がいる」「個人では変えにくい」に分ける
分け方は三つです。二つに分けようとすると、ほとんどが「動かせない」側に落ちてしまいます。
一定の範囲で自分の裁量が利くものから。学校の運用ルールや緊急対応で制約を受けますが、幅がある部分です。
- 放課後に空いた時間を、どの仕事に先に使うか
- 急ぎでない保護者連絡を、いつ・どの手段でやるか
- 完璧にやる仕事と、そこそこで出す仕事の線引き
次に、相談や申し出がいるもの。ここがいちばん大きい区分です。
- 校務分掌の負担。分掌は校長が決めるものですが、希望や負担の重さを伝える余地はあります
- 在校等時間の記録が、実態どおりに付けられているか
- 部活動の手当や、校外学習での自己負担の扱い
最後に、個人の工夫だけでは変えにくいもの。
- 給特法の仕組みそのもの(公立学校の教育職員に適用される法律です)
- 人事異動と、学校に持ち込まれる要求の総量
この作業の目的は、我慢する範囲を決めることではありません。一人で背負うべきではないものを、自分の努力不足だと思わなくて済むようにするためです。
ひとつ補足します。公立学校の教育職員に時間外勤務を命じられるのは、「超勤4項目」と呼ばれる4つの業務について、臨時または緊急のやむを得ない必要がある場合に限られます。一方で、それ以外の時間も「在校等時間」として把握の対象です。制度そのものは個人では変えにくくても、記録が実態と合っているかは確認できます。
何がつらいか言葉にできないときがある
分けようとしても、分けられないことがあります。しんどいのは確かなのに、何がしんどいのかが形にならない状態です。
理由はひとつではありません。制度の輪郭を知らないから質問できない場合もあります。疲れが深くて、考えを整理すること自体ができなくなっている場合もあります。
後者であれば、整理より先に休むことが要ります。考えがまとまらないのは、意志が弱いからではありません。
情報の問題であれば、別の手が打てます。手当という制度があることを知らなければ、「手当はどうなっていますか」とは聞けません。質問できるというのは、すでに輪郭を知っているということです。
私たちは授業で、問いの立て方から教えます。どこまで分かって、どこから分からないのか。それを言葉にする練習から始めます。同じことが、私たち自身にも必要なときがあります。
校内だけだと、相談そのものが重くなる
相談先が校内しかないとき、相談することの負担が上がります。
学級担任が「助けてください」と言うのは、かなり勇気のいることです。力量を疑われるかもしれない。人手を取ることになるかもしれない。自分の学級なのに、と思われるかもしれない。
そこに評価や異動の希望が重なります。市町村立学校の教職員の任命権は、原則として都道府県の教育委員会にあります。管理職が一人で決めるわけではありません。それでも、校内で話した内容がどこまで伝わるかは見えません。その見えなさが、話しにくさになります。
もちろん、校内でよく聞いてくれる同僚がいる学校もあります。その場合は、まずそこで話すのが早いと思います。
話すことと、辞めることは別
外に話すというのは、辞める準備をするという意味ではありません。
学校の外にいる人に説明すると、自分でも気づいていなかった前提が、言葉になって出てくることがあります。「それは普通です」と言われてきたことが、外から見ると普通ではなかった。逆に、変えられると思っていたことが、制度上むずかしかった。ひとりでは見えにくい部分です。
相談先は複数あります。校内の同僚や管理職。教職員組合。教育委員会の相談窓口。産業医や医療機関。教員向けのキャリア相談サービス。
教員向けのキャリア相談サービスについては、公式が説明していることと、どこにも書かれていないことを分けて整理した記事があります。クジラボの評判は判断できる?を参照してください。私はまだ相談を受けていないので、体験談ではありません。
選ぶときに、ひとつだけ気をつけたいことがあります。相談相手によっては、利害があります。転職が決まったときに紹介料を受け取るサービスもあります。有料相談や定額制のところもあります。だから悪いという話ではありません。相手がどういう立場で成り立っているのかを知ったうえで聞けば、話は十分に役に立ちます。
話した結果として続ける人もいますし、辞める人もいます。どちらも、束をほどいたうえでの選択です。
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