気合ではなく、データで「休む日」を決める──部活顧問の疲労マネジメント

教員という仕事は、一日が終わるとどっと疲れている。授業の準備、会議、生徒指導、そして日々の授業と学級経営。息つく間もなく次から次へとタスクが来て、気づけば8時間、ほとんど無呼吸で走り続けたような疲労感に包まれている。

私の場合、ここに部活動の指導も加わる。放課後も土日も動き続けて、連勤が当たり前のように積み上がっていく。子育て世代の先生なら、家に帰ってからが「第二の勤務」だという人も多いだろう。どの立場であれ、教員は慢性的に、バーンアウトの一歩手前を歩いている。

そんな働き方の中で、私たちは「休む」という判断がとても下手になる。休むかどうかを、なんとなくの「気合が続くかどうか」で決めてしまう。そして気合は、限界が来るまで自分では気づけない。

私はあるときから、この「気合で決める」をやめた。代わりに導入したのが、体調をデータで見て、休む日を決めるという方法だ。今回は、その考え方の話をしたい。健康法の推奨ではなく、あくまで一つの実践例として読んでほしい。

目次

「気合で判断」の何が問題か

疲労には、やっかいな性質がある。本当に疲れているときほど、疲れの判断力そのものが鈍るのだ。睡眠が足りていないと、自分が睡眠不足だという自覚も薄れる。無理が効いてしまう人ほど、限界を超えていることに気づけない。

教員は、この「無理が効く人」が多い職業だと思う。責任感が強く、休むことに罪悪感を覚え、周りも走っているから自分も、となる。その結果、気合で乗り切り続けて、あるとき糸が切れるように体調を崩す。私も何度か、発熱という形で強制終了させられた経験がある。

気合による判断は、要するに「壊れるまで気づけない」システムなのだ。だとしたら、自分の主観の外に、判断の基準を置く必要がある。

体調を「数値」で見るということ

そこで使い始めたのが、睡眠や体調を計測するウェアラブル端末だ。私が使っているのは指輪型のもので、睡眠の質、安静時心拍、体表温の変化などを毎晩記録してくれる。

とくに参考にしているのが、平常時からのズレだ。いつもより安静時心拍が高い。体表温が普段より上振れしている。睡眠スコアが落ちている。こうした数値は、自分が「まだいける」と感じていても、体が回復しきれていないことを教えてくれる。主観では「元気」でも、データが「赤」なら、それは無理をしている証拠だ。

面白いのは、発熱などの体調不良の前兆が、自覚症状より先に数値に出ることがある点だ。「なんとなく体が重い」の一歩手前で、体表温や心拍が異変を告げる。これを見て早めに休めば、本格的にダウンする事態を未然に防げる。

「入場券方式」で、休む判断を仕組み化する

ただ、数値を眺めているだけでは、結局「今日は大丈夫そう」と甘い判断に流れる。そこで私は、判断を仕組みにしている。「入場券方式」と呼んでいるやり方だ。

これは、負荷の高い活動(強度の高いトレーニングなど)をやる前に、「今日はやっていい状態か」をデータで確認し、条件を満たしていなければ入場券が発行されない——つまりやらない、と決めておく方法だ。睡眠スコア、心拍、体表温がすべて基準内なら「GO」、一つでも赤なら「今日は休む」。その場の気分で決めさせない。

ポイントは、迷う前にルールを決めておくことにある。疲れているその日に「やるか休むか」を考えると、たいてい「まあ大丈夫」に転ぶ。だから、判断を事前のルールに預けてしまう。データが休めと言うなら、気分がどうであれ休む。この仕組み化が、無理の連鎖を断ち切ってくれる。

※この「入場券方式」を、AIを使って毎朝自動で判定している具体的な運用については、Oura ring×AIで体調を管理する──「入場券方式」で無理を止める仕組みで詳しく書いています。

これは「サボり」ではなく「戦略」だ

データで休む、と言うと、甘えのように聞こえるかもしれない。でも、実際は逆だ。これは長く走り続けるための戦略である。

ダウンして数日寝込めば、その間の仕事も家庭も止まる。それより、データを見て先回りで半日休むほうが、トータルの稼働はずっと高い。生涯にわたって心身を動かし続けたいなら、壊れてから休むのではなく、壊れる前に整えるほうが合理的だ。回復は、活動の反対語ではなく、活動の一部である。

そして、これは自分のためだけの話でもない。教員が倒れれば、いちばん困るのは目の前の子どもたちだ。教員が持続可能に働くことは、子どもたちのためでもある。

おわりに

気合で「休む日」を決めるのをやめて、データに判断を委ねる。主観の外に基準を置き、迷う前にルールを決めておく。これだけで、無理の連鎖はずいぶん減った。

もちろん、全員がウェアラブル端末を買う必要はない。大事なのは道具ではなく、「自分の主観は当てにならない」と認めて、判断の基準を外に持つという発想のほうだ。走り続けるために、戦略的に休む。日々バーンアウトの一歩手前を歩く、すべての先生に、一度考えてみてほしい視点だ。

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けーわい先生
小学校教員
1987年生(メッシ世代)
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