以前、気合ではなくデータで休む日を決めるという話を書きました。今回はその具体編として、私が実際にやっているOura ring(指輪型の活動計測デバイス)とAIを組み合わせた体調管理の仕組みを紹介します。
導入——発熱で、20日を失った
この仕組みを作るきっかけは、手痛い失敗だった。無理を続けた結果、体調を崩し、その後の回復にずるずると時間をとられ、トータルで20日近くを棒に振ったのだ。
今思えば、予兆はあった。睡眠が浅い、なんとなく体が重い。でも「気合でいける」と押し切った。そして倒れた。倒れてから「あのとき休んでおけば」と後悔しても遅い。失った20日は戻らない。
このとき痛感した。自分の主観は、体調管理においてまったく当てにならない。だったら、判断を自分の外に出すしかない。そう考えて作ったのが、これから紹介する仕組みだ。
「入場券方式」とは
仕組みの核は、「入場券方式」と呼んでいるルールだ。負荷の高いこと(強度の高いトレーニングなど)をやる前に、体が「入場券」を発行してくれるかどうかをチェックする。券が出れば実行、出なければ休む。
判定は、Oura ringが記録する主要な指標を使う。ざっくり言えば、睡眠の質・安静時心拍・体表温のような、回復状態を映す数値だ。これらが平常どおりなら「緑(GO)」、少し乱れていれば「黄(軽めに)」、明らかにおかしければ「赤(休む)」。信号と同じ三段階で、その日の行動の上限を決める。
大事なのは、この判定をその日の気分でなく、事前に決めた基準で行うことだ。疲れている日に「やるか休むか」を考えると、人はたいてい甘いほうに転ぶ。だから、迷う前に基準を決めておく。
実際の運用——毎朝、スクショを投げるだけ
とはいえ、複数の数値を毎朝自分で読み解いて三段階に判定するのは、地味に面倒だ。続かない。そこで登場するのがAIである。
運用は、拍子抜けするほど簡単だ。毎朝、Oura ringアプリの画面のスクリーンショットを、AIに投げるだけ。「今日の判定は?」と一言添えて送る。すると、AIがその日の数値を読み取り、あらかじめ伝えてある私の基準に照らして、「今日は緑です」「黄色なので軽めに」「赤なので休養推奨」と返してくれる。
自分でグラフを睨んで悩む必要がない。スクショを撮って送る、10秒の習慣。判定はAIに任せる。この「手間のなさ」が、続けられる最大の理由だ。どんなに良い仕組みも、面倒なら続かない。続く形にすることが、いちばん大事だった。
AIに「止めてもらう」という発想
この仕組みのいちばんの肝は、実は判定の精度ではない。AIに「止め役」をやってもらうという点にある。
人は、自分で自分を止められない。とくに、走ることが好きな人間ほど、「今日はやめておけ」の判断が下手だ。私もそうだ。放っておけば、赤信号でも走ろうとする。
そこで、止める役割を自分の外——AIに預ける。AIは私の気合や願望に忖度しない。データが赤なら、淡々と「休養推奨」と言う。この「他者から止められる」構造が効く。自分一人だと「まあ大丈夫」で押し切るところを、AIに「今日は赤です」と言われると、素直に休める。判断を外部化することで、意志の弱さを仕組みでカバーしているわけだ。
これは、教室で子どもに「タイマーで管理する」のを教えるのと同じ発想だ。意志に頼らず、仕組みに頼る。人間の弱さを前提に設計する。自分の体調管理でも、まったく同じことをしている。
3ヶ月やって分かったこと——夢中さより、仕組み
この方式を3ヶ月ほど続けて、はっきり分かったことがある。継続を支えるのは、モチベーションではなく仕組みだ、ということだ。
体調管理を「よし、ちゃんとやるぞ」という気合で始めると、必ず三日で飽きる。数値と睨めっこする熱意は続かない。でも、「毎朝スクショを1枚投げる」という限界まで簡素化された仕組みなら、夢中でなくても続く。むしろ、夢中である必要がない。淡々と、歯磨きのように続く。
そして続けているうちに、大きな体調の崩れがなくなった。赤信号の日に無理をしないだけで、あの20日を失った失敗は、繰り返さずに済んでいる。派手な健康法ではない。ただ、無理をする日を、仕組みで減らしただけだ。
私が使っているデバイス
参考までに、私が使っているのは Oura ring の第4世代です。指輪型なので睡眠中もつけていて負担がなく、睡眠・心拍・体表温を自動で記録してくれます。この計測データがあってこそ、AIによる判定が成り立っています。
おわりに
Oura ring×AIの体調管理は、突き詰めれば「自分を信用しないための仕組み」だ。主観は当てにならないと認め、判定はデータに、止め役はAIに預ける。そして、その仕組みを続けられるところまで簡素化する。
大事なのは、夢中になることでも、意志を強く持つことでもない。弱い自分でも回る仕組みを作ること。体調管理も、ブログも、トレーニングも、続くものはたいてい、この形をしている気がします。
※体調の感じ方には個人差があります。ウェアラブル端末は医療機器ではなく、体調に不安があるときは自己判断せず、医療機関にご相談ください。
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